海上船内物語
■美しき怪物を生きたまま手に入れる
□陰
□ □ □
「・・・最近、“女神”の姿を見なくなったねぇ」
「あら本当、どこかの盗賊にでも浚われたかしら」
「まさか、“女神”に限ってそんな事ないわよ」
乾物屋の女は遠くの海を眺めた。
そして、真似るように隣の主婦も海を見遣る。
「・・・・・・最近治安も悪くなったしねぇ」
「もしかしたら近々海が大荒れになるかもしれないわよ?」
「やめてよ、本当縁起でもない・・・でも、何か胸騒ぎがするわよねぇ」
人々が集まり、騒がしい街の一部。
丁度そこは海が見渡せる高地で、治安が良かった。
「あの子が居ないと何となく・・・物寂しいわねぇ」
「いやよ、私は。だって不気味じゃない」
「そうかしら?」
潮風が、街を吹き抜ける。