海上船内物語










□ □ □



「ウル、クルト、ジャン、サミア、それとオルガ。」


カイルは包丁を片手に、目の前に居る船員達を指差していった。


「・・・・・どうしたカイル、頭いかれたかぁ?」

ウルが困ったような視線をカイルに投げ、大量にある芋の皮を剥く。


「元々頭悪い奴だと思ってたが・・・ついに本格的に壊れだしたか」

サミアと呼ばれた男が人参を切りながら、哀しげな視線をカイルに遣った。


「違う!!頭悪いのは否定しねぇが!壊れてないぞ!」


ばん、とカイルは包丁を板に置く。


「俺はなぁ、皆の名前覚えようと努力してんだぜ?!頭いかれてなんかねぇぞ!!」


他五人が疑いの眼差しを向ける。
カイルの眉間に皺が寄った。


「その内覚えるから大丈夫だって。俺なんか意識せずに覚えちまったぜ?」

「名前はもう覚えたんだけどよー、顔が一致しなくって」

「そこそこ人数居るからなー。」


カイルがウルの皮剥きを手伝う。
分厚い皮がぼとりと落ちた。


「ちょっカイル、お前食う所無ぇじゃねぇか!」

「・・・・皮の方が厚くなる。」

「不器用だな!本当に!」


調理部屋から笑いが零れる。



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