海上船内物語
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「ウル、クルト、ジャン、サミア、それとオルガ。」
カイルは包丁を片手に、目の前に居る船員達を指差していった。
「・・・・・どうしたカイル、頭いかれたかぁ?」
ウルが困ったような視線をカイルに投げ、大量にある芋の皮を剥く。
「元々頭悪い奴だと思ってたが・・・ついに本格的に壊れだしたか」
サミアと呼ばれた男が人参を切りながら、哀しげな視線をカイルに遣った。
「違う!!頭悪いのは否定しねぇが!壊れてないぞ!」
ばん、とカイルは包丁を板に置く。
「俺はなぁ、皆の名前覚えようと努力してんだぜ?!頭いかれてなんかねぇぞ!!」
他五人が疑いの眼差しを向ける。
カイルの眉間に皺が寄った。
「その内覚えるから大丈夫だって。俺なんか意識せずに覚えちまったぜ?」
「名前はもう覚えたんだけどよー、顔が一致しなくって」
「そこそこ人数居るからなー。」
カイルがウルの皮剥きを手伝う。
分厚い皮がぼとりと落ちた。
「ちょっカイル、お前食う所無ぇじゃねぇか!」
「・・・・皮の方が厚くなる。」
「不器用だな!本当に!」
調理部屋から笑いが零れる。