海上船内物語


「この船には俺一人で来た。小船でね。だからあの位の衝撃でこの船は傷付いたりしないよ。さっきから船長さん、そればかり気にしてるでしょう?」

「・・・・・・海賊一人も殺れないで、海に沈没する無力な死に様は晒したくないものでな」

「俺を殺る気?」

「当たり前だろう」


ガン、とアルは船長室のベランダへと続く扉を蹴破った。
不可解な行動にアキは眉を寄せる。


そのままアルは木椅子に立ち、そこから伝ってベランダの塀に足を掛けた。


「?・・・・・・・何を・・・・」

「残念だけど、今日の相手は船長さんじゃないんだ。もう“欲しい物”は決まってる」

「・・・・・・・“欲しい物”・・・・?」


がん、と塀を蹴り上げ、アルはその場から姿を消した。


(・・・・ベランダから落ちるだと・・・・・?!)


アキがすぐさま駆け寄る。
すると、真下の甲板でその金髪は見えた。


「貴様!!」

「一足お先に失礼。悔しかったら船長さんもそこから飛び降りれば?」


嘲笑うように、アルは手を振りそのまま船底の床を開ける。


「言われなくとも降りるわ!」

「・・・・・・・え、」


珍しく声を荒らげたアキはそのまま、アルがしたようにベランダの塀に登り、そのまま数メートルはあるだろう高さから、甲板に向かって飛び降りた。


「・・・・まさか本当に飛び降りるなんて想定外だ」

「待て!」


床下を開け、するりと中に入っていくアル。


(・・・床下・・?には調理部屋しかない筈だが・・・)


アキもアルに続く。



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