海上船内物語
「っなにすんだ!!」
その場で一人、カイルだけが煩く声をあげる。
アルの体を押し返した。
「冷たいなー」
口端を舌でぺろりと舐め、カイルを見下す。
カイルは服の袖で唇を拭った。
「・・・俺の目的はカイルだったけど・・・・・・、今日はそうはいかないらしい。一旦引き上げさせてもらうよ」
「・・・・待て!!」
アルの足元に血の海ができていた。
背中に負った傷が相当深かったのだろう。
それでも梯子を使わず甲板に飛ぶ、アル。
(何て跳躍力だ・・・・!二メートルはあるってのに)
それに続いてアキが甲板に出る。
「・・・・・・・・クッソ・・・・・」
甲板を見渡したが、そこには誰も居なかった。
「裏だ!一番初めに衝撃があったのは裏の方からだ!きっとそこに船がある!」
「はい!」
直ぐに甲板にあがってきたウルと一緒に、細い船体の間を通る。
そこには、小船に乗ったアルの姿があった。
が、もう死神船とは離れていて到底届きそうにも無いようだった。
「船長さん、海賊船“アリア”の船長はあんたの良く知ってる人間だよ」
「何だと?」
そして、アルは薄ら笑みを浮かべながら、死神船から離れていく。
「船長・・・・・」
「・・・無理だ。小船は動きが俊敏だからな。追いつく筈はないだろう」
アキが眉を顰め、不機嫌そうな表情になる。