海上船内物語
「・・・・・・・・・・・そうか、貴様は何も言わんか」
アキが呆れたように剣を抜いた。
「俺が見込み違いだったな。この船で倒れていたお前を残しておいたのも間違いだった」
剣を鞘に収める。
それを見て、カイルは首を傾げた。
「・・・・・・俺を斬るんじゃないのか?」
「貴様は斬らん。このまま政府に引き渡す。この死神船で裏切り者は政府に渡す事になってるのだ。無論、お前が初めてだがな」
毒を吐き捨てるように、アキは呟いた。
「後ろを向け」
「うわっ!」
カイルの頭を掴み、ぐるりと回転させる。
ふらつきながら、カイルは後ろを向いた。
「・・・・・・・・・・なんだこれ?」
「死神船に侵入してきた海賊を捕らえる為のものだったが・・・。この際貴様に使う」
カイルのまん前にあったのは、古い壁。
そこの壁の斜め上に、手枷の様なものが二つ取り付けられている。
「腕を上げろ」
「ちょっ、待っ、届かないって!」
「伸ばせば届く」
カイルの腕を持ち上げ、壁に張り付くように、手枷に手首を押し付けるアキ。
が、その枷はどうやらカイルの背に合わず、カイルはほとんどぶら下がるようにして壁に張り付いた。
「・・・・アキ、腕痛い」
「進路を南に変える。あと少しの我慢をすればリゲの所に着くからな」
「・・・・・・・・・」
嫌味を込めながら、アキはカイルに励ましの言葉を投げた。