海上船内物語
そして、数分後にアキがまた部屋に入る。
「うわっ!!」
「だから何をいちいち驚いているのだ。」
「だっていきなり入ってくるから・・・」
カイルは壁に向かって拘束されていて、アキとは背中向け、となる。
視界がほとんど定められている状況で、一つの物音に驚くのもカイルらしかった。
カチャン、とカイルの頭上で金属音がする。
「え、」
「食え。餓死されても困るからな」
がくり、と枷が外され腕が落ちる。
目の前に突き出されたのは、パンとスープ。
「アキ・・・・・・・・・!」
「そんな煌いた目で俺を見たって何も変わらないぞ」
尊敬の眼差しでアキを見上げるカイルを、気持ち悪そうに追い払うアキ。
「俺にはまだ実感が無いだけだ」
そして、詰まらなさそうな顔をカイルに向ける。
「俺が拾ったお前が、本当に裏切り者だったのか、本当に海賊の一味なのか、と。」
カイルの表情が引き締まる。
「・・・・・・・・・・・ごめん」
「何故謝る。謝ってもどうもできない事だろう」
アキが怪訝そうにカイルを見下ろす。
きょとんとカイルは首を傾げた。
「・・・どうせ、ガルフの頃の死神船も“政府”に縛られていたのだ。仲間だった奴を突き出すのは何とも見苦しい事だな」
かつ、と靴音が部屋に響き、そのまま出て行ってしまったアキ。