海上船内物語
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ぎり、とカイルは奥歯を噛み締めた。
「っ、・・・・・・・・・・・・・」
「アランの言ってた事は本当だったんだな。死神船に女が居る、って」
カイルは頭を振って、視界を覆う布を振り解こうと試みた。
が、その動きを遮られる。
「・・・俺は、俺が海賊になる前から手前ぇの存在を知ってたんだ」
「・・・・・・・・どう言う意味だ」
「きっと、お前は知らねぇよ。随分前の話だ」
男が、唇をカイルの首に寄せた。
カイルが甲高い悲鳴を漏らす。
「何すんだ、気持ち悪ぃ!!俺はお前の名前も、顔も、存在も知らねぇ!!離せ!」
「おっと。冷たいなぁ手前ぇ。」
カイルの自由な脚が、男を蹴り上げようとする。
それをひらりとかわす。
「それじゃあ、俺の名前だけでも知ってもらうか。俺は、シーザ・ウラティル。大海賊連盟ベイズラリアの幹部、“アリア”の船長をやってる男だ!」
「ベイズラリアの幹部?!敵じゃねぇか!」
カイルが思わず叫ぶ。
その口を、シーザが手で塞いだ。