海上船内物語
『愉しいんだもん・・・・・・』
『愉しい?そうか、愉しいか!また厄介なガキだな!ガハハハハ!』
アランが豪快に笑うのを見て、カイルは血のべっとり付いた頬を緩ませる。
『来い、カイル!一緒に風呂入るか』
『うん!』
カイルが物心付いた頃から、周りには冷血残酷で知られている大海賊アランや、その仲間達が屯っていた。
勿論“屍”と言うものは日常のように見ていたし、カイルもその存在は当たり前だと思っていた。
無知。
“死んでいる者が居る”と言う事がカイルにとって、全くもって“異常”と言う事では無かった。
『父ちゃん、みんな私を怯えるようにして見るの』
『そりゃあきっと、お前が俺の子供だからだなー』
『何で?』
無垢な瞳で父親を見上げる。
『・・・・・アランさんの娘、初めて人に手ぇ掛けたの、三歳の時だってよ』
『恐ろしいなー、あの爆弾娘。関わってたらろくな事無ぇぜ』
カイルの横を通り過ぎる、血塗れの海賊。
『・・・父ちゃん、あいつらと私は何が違うの?』
『ガハハハハ、そりゃあ・・・違ぇっちゃあ違ぇ。』
『あいつらも私と同じ事してんのに?』
十歳。
片手に父から譲り受けた血塗れの剣をぶら下げながら、カイルは自分が初めて、“異常”だと言う事に気付いた。