アイスフレイム
とりあえず、俺達は洞窟から出て傷の応急手当をした。シオンは弓使いで敵から離れてたからあんまり傷はなかったけど、俺の腕がひっっでぇ。血がだらだら出てるし肉が見えてる…ぶっちゃけグロいわ。
「あわわ…カオル、大丈夫!?痛くない!?」
シオンがめっっちゃ心配してくれてる。なんか悪いな、こんなに心配かけたら。
…ま、もちろんめちゃくちゃ痛いんだけどな。やせ我慢ってやつですよ。ははっ。
そんなんだから当然まともに歩ける訳もないから、シオンに肩を貸してもらって、俺はレイドタウンまで歩いた。
日が沈む頃になって、やっとレイド城に辿り着いた。
…と思ったんだけど、おかしいな…なんか、目の前がぼんやりして…。
………。
……………?
ここはどこだ?真っ暗で何も見えねぇ。
「シオン!どこだ!?シオン!!」
返事が無い。どこに行っちまったんだ、あいつ?何だろう…胸騒ぎがする。
ん?何だ!?何かに引きずり込まれる…。
助…け……。
「カオル!!」
…ん?
シオンの声だ。
「シオン…」
「カオル!!良かった、目が覚めたんだね!」
「目が覚めた?シオン、今一体何があったんだ?」
「何があったじゃないよ!ここ…レイド城に着いてから今までの10日間、ずーっとカオルは気絶してたんだよ!?」
気絶…?じゃあ、さっきのは夢だったのか。
「良かった…」
え?ちょ、何で泣いてんだ、シオン!?
「もしかしたらこのままずっと目を覚まさないんじゃないかって、心配だったんだよ…カオルが無事で本当に良かった…」
「シオン…ありがとな」
シオンの頭に軽く手を置いてやったら、シオンはいっそう激しく泣き出した。
…俺、シオンみたいな優しい奴の仲間になれて、幸せ者だな。
あれから、レイドタウンにフィーノスが現れることは無くなった。俺達の噂が街中に流れて、誰かとすれ違う度に「街の救い主だ!」って言われる羽目になった。
王様も例外じゃなくて、今回のフィーノス退治のお礼は何が欲しいかって聞かれたけど、俺達は断った。これからも、この城を拠点にさせてくれればそれでいい、って思うからさ。
こうして、俺達は一つこの街に伝説を残した。
でも、俺達の冒険は、まだまだこれからだ!