アイスフレイム
第二章 弱者と強者
えーっと…。
とりあえず誰か、この状況を説明してほしい。
…って、こんなこと前にもあったな。デジャヴってやつ?
ま、それは置いといて。
俺達の目の前には、土下座した女性が一人。
どうしてこうなったのか俺にもよく分かんないけど、俺以外の奴にも分かんないだろうから、順を追って思い出そう。
まず、あのフィーノス討伐事件から数週間経った。俺の腕の傷も、傷薬のおかげで思ったより早く治った。
で、久々にシオンと一緒に街を探検(?)することにしたんだ。
パンを買って食べ歩いてたら、確か今土下座してるこの女性に話しかけられたんだ。
「すいません、あなたたちはもしかして、この街をフィーノスから守ってくれた方ですか?」
「…はい、そうですけど」
パンを飲み込んで答えたあの時の俺の思考回路は、パン美味いで埋め尽くされてた気がする。
ま、それは置いといて。
俺が答えた途端に、その女性は頭を下げて泣き叫んだんだ。
「お願いします!私の娘を助けてください!」
「…はい?」
「何があったんですか?」
「もう…もう、あなたたち以外に頼れる人がいないんです!」
…こうして今に至る。
「落ち着いてください。それから顔を上げてください。何があったのか、僕達に話してみてくれませんか?」
はー、やっぱりシオンはしっかりしてんな。俺なんてただ呆然と立ち尽くすことしか出来てないのにな。
お、顔を上げてくれた。ひどくやつれてんな。大丈夫か?
「…実は、私の娘が、ドラゴンにさらわれてしまったんです」
「ドラゴン!?一体どんな?」
「カオル、今はそんなこと気にしてる場合じゃないよ」
怒られた。
「もう一週間以上も前のことですから、誰も助けてくれないんです…貴方の娘さんはもう喰われたんだ、と皆言うんです」
なるほど。確かに、喰われててもおかしくはないな。
「でも、貴方はまだ信じてんですか?娘さんが生きてるって」
「もちろんです!娘は絶対に生きてます…いえ、生きていてほしいです!う、うぅ…」
あ、また泣き出しちまった。俺達が泣かせたみたいで、なんか悪いな。
うーん、ドラゴン、ねぇ…今の俺達に太刀打ちできるとは思わねぇけど…。
「シオン…どうする?」
「質問するまでもないよ。カオルの中ではもう決まってるでしょ?ドラゴン討伐に行くって」
さすがシオン。俺のことをよく分かってるな