我が異常な闘争 または私は如何にして心配するのを止めて闘いに巻き込まれていったのか


 無論私はそんなトンデモな理論に到底納得することなどできなかったが、この問答に時間を無駄にしたくなかったこともあり、彼らの違法な所持品検査に止む無く同意することにした。

 彼らの手の何本かが私のジーンズやジャケットを一斉に漁る。
 携帯電話や定期入れが、私の黒い財布が地面に落ちる。
 私はあたかも犯罪者になったかのような幻覚を見る。

 と、彼らの「手」のうちジャケットに滑り込みもぞもぞと動いていた丸い「手のひら」が突然開いたかと思うと、ゴソっと何かがポケットの中に落ちる感触があった。

 そこにすかさずその手がゴソっと落ちた異物を取り出し宙に放る感触があった。

 見たことのない、白い財布が落ちた。
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