我が異常な闘争 または私は如何にして心配するのを止めて闘いに巻き込まれていったのか
 と、ここまで考えたところで私ははっとした。
 私は確かに、「これは、きっと恋なのだ。」とさきほどの女性に対する感情として結論を見出していた。
 さらに、電車の通る前と後の二回、はっきりと目を合わせていた-相手がこの時二度私の愉快でない不細工な顔を見て気分を害したとするならば-これを二度のつきまといがあったと解釈される恐れもあるではないか。

 厳密に言えば、こんな法的解釈は誤っている。だが、ここで、目の前の女性の着用している濃紺の制服が一体どんなジャンルのものであるか、-制服と言えば所属する身分や地位を象徴するものであるから-ということをこの時に同時に分析し終わった私にとって、後者の結論は実に禍禍しく、もっともらしく起こり得るシミュレーションの結果であるという事実関係を見出すに至ったということも確かであった。

 この濃紺の制服を着用している女性は、明らかに金属製の黒光りする拳銃を所持しているが、どうもこの所持は合法らしい、ということがわかった。
 そして、ここで、警察官職務執行法の7条に武器の携行を規定する条文があったなということを思い出しながら、この女性がどうやら近所の交番に勤務する女性警察官であるらしい、ということに気付いていた。
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