*あいのうた*

『人気(ヒトケ)ないこの場所のこの鉄の扉の鍵は壊れてるのです』

それから何食わぬ様子で、スッと立ち上がりドアを開ける…。

『どうぞ』

と中に軽くエスコート。


おぉ…っ


校舎の一番隅っこのそこは、少し広いベランダだった。

『昼時以外は超寒いんだけどさ、今だけ暖かい。俺は眠いハハー』

続けてポケーっと彼は言う。


調理室は北側。陽が当たる時間も限られるみたい。


『俺くらいになると隠れ場所がいくつも必要なんだよね』

『なにそれ?』

『俺の生活場は学校だからね、色んなイイ場所見つけて特別な時にこうして使えばいーじゃん』


…?

トクベツ…?


『は、はぁ…?』


藤堂響の言う「トクベツ」は場所なんて…

女の子を連れ込むに絶好の場って事なんではないだろうか…


…ちん。。。


藤堂は携帯番号だけでなく、やっぱりオメデタイ人間だと確信。

その言葉は何かとっても偉そうなセリフだと思った。

でも嫌味に聞こえなくて、何と無く納得してしまうのが藤堂響の力なのかもしれない。


藤堂はベランダにドカッと座り込み、大伸び。

陽の光が淡く彼を背中の方から照らしていた。

やっぱり藤堂の髪はキラキラと金色に透ける―


何をしても様になるところが悔しいっ


そう思って扉の前に立っていた。


『座れば?』

『あっッうん』


あたしが色々考えていると、そう言った王子は同時にパンを差し出す。


『チョココロネ食う?』

『チョココロネ?』


藤堂響の口から「チョココロネ」とはまた意外(笑)


そう思ってジッとパンを見つめた。


『俺んちの近くのちっちゃいパン屋うまいんだよね』

「奢るって言ったじゃん」と見つめたままのあたしの手にチョココロネを置く。


『でも本当はパンより米がすき』


唖然としているあたしに気付いているのか居ないのか?

クスッと小さく笑って彼は続ける。


『そ、そう…なんだ』

とりあえず返事をすると…


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