*あいのうた*
そしてお姉さんの事を話してくれた。
陽射しを受けながらコロコロと表情を変えてオーバーアクションで語る。
手持ちぶたさと緊張で、今出来る何かをしてないとダメな気がして…ご飯を食べながらドギマギ聞いた。
一番上のお姉さんは結婚していて、隣の家に住んでいて、かなり姉さん女房。
二番目がギャルだけど強いて言うなら一番優しいらしい。お弁当を作ってくれるお姉さんだそうだ。
三番目は藤堂響曰く「変な女」らしい。
四番目は、一番落ち着いてるけど、有無を言えず…良くアシに使われるんだと言う。
『極めつけは母ちゃんと父ちゃんでさぁ!!女の子の口説き方を伝授してくんの!!』
藤堂一家はきっと凄まじいんだろうなぁ…
藤堂響と会話をする空間は、他愛もない話のはずなのに…
口に入れたオカズが何だったかわからない。
何を食べているのかわからない。
どうしてこんなにドキドキになってしまうのよっ
これが藤堂響の魔力?!!
『でも俺さー、多分みんなが言うほどチャラくないんだと思うんだよね』
そんなあたしの心中に響く彼の声。
『はいっ?!』
チャラいにどれ程のレベル分けがあるか知らないけど…
毎日毎回違う女の子を横に立たせて
自らチャラい発言と女の子慣れした行動。
彼女は不特定多数な噂が絶えず尽きない。
誰が本命かもわからない…
女の子に囲まれてヘラリと笑い、我が物顔で居れば立派なチャラ男だと思うのだけど…
なっ何を言うんだこの男っ!!
あたしは、ドキドキしながらも、ちゃんと考えられる思考回路はまだ生きていたらしい。
そう思って、燻し気にチャラ男を見る。
『疑ってるでしょ?』
『う、疑うって言うか…だって周りにいつも女の子が色々いるのは間違いないじゃない?』
『うーん…まーね…』
ちょっと考えながら藤堂は続ける。
『でも、別に俺が望んだんじゃねぇよ。周りが「響〜」って言って来るだけだし…勝手に名前呼び捨てだし』