*あいのうた*
敵わない相手が瞳の前にいると改めて感じる。
『あたしは…両親と、お兄ちゃん』
藤堂のペースに突っ込みするのは諦めて答える事にした。
全く…
『じゃぁ末っ子同士かぁ?俺下に弟か妹欲しかったなぁ』
苺牛乳を飲みながら「うちの姉ちゃんなんか強烈で変なんだよなぁ…コテンパンにされるの痛いしさ」と続ける彼。
藤堂響も十分変な人ですからっ!!と心の中で突っ込んだ。
言葉に出さなきゃ意味ないのに…っ!!
しかも「苺牛乳」ってどんな乙女っ!!
苺牛乳に釘付けのあたしを気にせず、平然とコンビニの袋からパンを出す変な人…
『と、藤堂響は、今日はお弁当じゃないの?』
『だから、何でフルネーム?「響」でいーよ』
だぁぁああっ!!うるさいぞチャラ男っ!!
会話の返事はそこなわけ?
『いいじゃんっ!!もうっじゃぁもう一回言いますっ「ひ、響はお弁当じゃないの?!!」』
半ばヤケ気味に「響」と言った。
『んにゃ、ネコに弁当食くわれる』
藤堂はあたしの反応にちょこっと笑ってから普通にお返事。
憎たらしいっ
その笑い方ッ憎たらしいっ
「響」と訂正までさせたくせに、それに対してそれといったコメント何にも無いとは、さすが王子精神?!!
真っ赤なあたしの顔を返してよっ!!
でも…
『猫?』
藤堂は「猫」って言ったよね?
それが気になった。
何だかんだ話を聞いてるあたしもなんだかな…
みぁー
??
『ほら来た』
ナイスナイミングで、どこからか猫の鳴き声。
『ネコ!!来いよ!!』
王子は偉そうに猫を呼ぶ。
その方を見ると、小さな白い猫が居た。
どっから来たのかな?と思ってると
藤堂は自分の鞄からお弁当箱を出して猫に差し出す。
『メタボになるなよ』
あたしは猫と会話をしている彼の姿を静かに見ていた。
藤堂の前まで来た猫は彼の足にスリスリ顔を寄せる。
『うぉ~かぁいーなぁ』
ムツゴロウさんみたいに猫をワシャワシャ。
『お前は生意気にキャットフード食わないからなぁ』