*あいのうた*

敵わない相手が瞳の前にいると改めて感じる。


『あたしは…両親と、お兄ちゃん』

藤堂のペースに突っ込みするのは諦めて答える事にした。


全く…


『じゃぁ末っ子同士かぁ?俺下に弟か妹欲しかったなぁ』

苺牛乳を飲みながら「うちの姉ちゃんなんか強烈で変なんだよなぁ…コテンパンにされるの痛いしさ」と続ける彼。


藤堂響も十分変な人ですからっ!!と心の中で突っ込んだ。

言葉に出さなきゃ意味ないのに…っ!!

しかも「苺牛乳」ってどんな乙女っ!!


苺牛乳に釘付けのあたしを気にせず、平然とコンビニの袋からパンを出す変な人…


『と、藤堂響は、今日はお弁当じゃないの?』


『だから、何でフルネーム?「響」でいーよ』


だぁぁああっ!!うるさいぞチャラ男っ!!

会話の返事はそこなわけ?


『いいじゃんっ!!もうっじゃぁもう一回言いますっ「ひ、響はお弁当じゃないの?!!」』


半ばヤケ気味に「響」と言った。


『んにゃ、ネコに弁当食くわれる』


藤堂はあたしの反応にちょこっと笑ってから普通にお返事。


憎たらしいっ
その笑い方ッ憎たらしいっ


「響」と訂正までさせたくせに、それに対してそれといったコメント何にも無いとは、さすが王子精神?!!

真っ赤なあたしの顔を返してよっ!!


でも…


『猫?』


藤堂は「猫」って言ったよね?

それが気になった。


何だかんだ話を聞いてるあたしもなんだかな…


みぁー


??


『ほら来た』

ナイスナイミングで、どこからか猫の鳴き声。

『ネコ!!来いよ!!』

王子は偉そうに猫を呼ぶ。

その方を見ると、小さな白い猫が居た。

どっから来たのかな?と思ってると


藤堂は自分の鞄からお弁当箱を出して猫に差し出す。

『メタボになるなよ』

あたしは猫と会話をしている彼の姿を静かに見ていた。


藤堂の前まで来た猫は彼の足にスリスリ顔を寄せる。

『うぉ~かぁいーなぁ』

ムツゴロウさんみたいに猫をワシャワシャ。

『お前は生意気にキャットフード食わないからなぁ』


< 16 / 34 >

この作品をシェア

pagetop