*あいのうた*
時々、「響」って呼べて、大体「藤堂」って呼んで、藤堂は呼び方についてはもう何にも言わなかった。
だから変に意識しなくて平気で、思い通りに彼を呼んだ。
ネコにお弁当をあげてから6日目、藤堂が休み続けて12日経っていた。
『で?凛はいつから猫が彼氏になったのよ?』
『彼氏じゃないよ?ネコは女の子だもん』
『どっちでも良いけどさぁ、それにしても入れ込んでるね?』
『だってだってかわいーんだもん♪』
『猫じゃなくて…最近藤堂は…?』
『え?まだ長野だよ』
『なんだかんだ仲良くやってんじゃん?』
『別にちがうもんっ!!深い意味なんてないし!!
さて、ネコの所に行ってこよ』
芽奈の話しに半ば逃げるみたいに教室を出た。
芽奈が「あたし藤堂をどう思うかなんて何にも聞いてないのに」と呟いていたなんて知るよしもなく
ただトクトク波打つ胸を押さえて早足で目的地に向かっていた。
途中で止まって周りに人が居ないか意味も無いのに確かめてしまう。
こ…このドキドキは誰にもバレていないよね?
心なしか、最近前より鼓動が高く鳴る。
ベランダの近くまで来て、少し寒そうな空を窓越しから見た。
藤堂は今何してるかな…?
今日東京は寒いよ
開いた窓から冬の風が染みてくる。
きっとそっちはもっと寒いよね?
おーい、ひびきー?!
もう大分会ってないねー
そしてドアを開けた。
『おはよネコ♪ってお昼だけどさ♪』
みぁ〜♪
ネコはあたしにとても馴付くようになったんだよって藤堂に早く見せたいな♪
ネコは今、目の前で持ってきた煮干しを満足そうに食べている。
幸せそうね…
『ねぇ?ネコは藤堂響が好き?』
そうして、気付くとこんな事を聞いていた。
みぁ〜ぁ♪
嬉しそうにネコは鳴く。
ネコ語はサッパリわかんないけど、"嬉しそう"そんな気がしてしまった。