*あいのうた*

『ネコは藤堂響がすきなんだね』



そう言って優しく撫でてみる。



みぁ♪
「当たり前でしょ」


『てゆうか、ネコってメスなの?』


みぁ
「当たり前でしょ?今更聞くの?」



『そっか、藤堂響すきな子いっぱいいるよ。ライバル沢山いるよ?』


みぁっ
「知ってるけど、あたし人間じゃないから問題ないわ」


『そっか、羨ましいな』


あたしは、ベランダでネコと二人(正確には一人と一匹)で話していた。


ネコ語を勝手に翻訳して、勝手に質問して答えているあたしは結構怪しい人だと思うけど


「羨ましいな」そう思った自分に自分で"ハテナ?"と思う。

羨ましい…かぁ





『ねぇ?ネコ』

「なに?」

『どう思う?』

「何が?」



あたしの言葉の続きを催促するかのようにネコはみぁ〜みぁ〜と鳴く。


その鳴き声が歌みたいに心に届く。



『朝とか…電話が遅れただけですごいヘコんだんだぁ。』


藤堂の連絡で朝が始められなかった時、今まで知らないような胸のザワザワを感じた。

嫌だな、不安だなって物凄く思った。



『響が絶対に連絡くれるって待ってたあたしがいたの』


最近は藤堂で始まる朝が当たり前。

会話に馴れてくのが嬉しかった。

自分から自然にメールが出来るようになって嬉しかった。

毎日話す他愛もない話が楽しいと思った。









『あたし…藤堂響がすきかもしれない』











言ってしまった。

思わず言葉にしてしまった。


でも、今の本当の気持ちなんだ。


頭に浮かぶのは、いつの間にか藤堂響の事ばかり。



『ドキドキがね、ずっとするんだ…話してると』



このドキドキは、何なのかなんとなく知ってる。

胸の中が、ギュッてなる



人をすきになった時の気持ちだってわかる、から…

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