余命6ヶ月

特別な思い出の日

試合が終わって、久しぶりに春菜と2人で帰ることにした。

「はぁ〜、負けちゃったねでも、楽しかったぁ」

「そうだなぁ、でも試合より、春菜を見てた方が楽しかったけどな」

「なにそれ〜どういうことねぇ」

自然と会話が弾んで、気がつけば手を握っていた、

「ねぇ、あの学校の桜の木のところに行こうよ」

「そういえば、もうあれから1年経つんだね」

その時の僕は少し淋しい気持ちだった。
急に立ち止まった彼女は、
「もう少しで学校だね、競争しようよ」

楽しそうに微笑む彼女の肩に一枚の桜の花が落ちて来た。

「時が過ぎるのは早いね。はいどうぞ」

彼女の肩に乗った桜の花を手に取り春菜に渡した。
少し間を置いて、

「さぁて、勝負としますかゴールは、桜の木の下で」
「罰ゲームはありだよ勝ちゃん」

2人は、見合って同時に走りだした。
もちろん負けたのは僕だった。

「懐かしいなぁ、ここで高校入試終わって来てみたら、春菜ずっと泣いてたもんなぁ」

「そんなことあったっけ、忘れちゃった」

桜の木を背もたれに2人は思い出話に華を咲かせていた。
暗くなる頃、2人は歩き始めた。彼女の家の前までくると、

「罰ゲーム忘れてた」

と言って歩みよって来た彼女は、耳元でささやいた

「う〜ん、いいよ」

返事を聞いた彼女は、

「約束だよ」

と言うと家の中に入って行ってしまった。
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