Colorful World
 紅茶にそっと口をつけ、ゆっくりと味わう海理。無音の空間に、旭はどうしても居心地の悪さを感じてしまう。

「あ!千草さんに電話しないとっ!ちょっと待っててください!」

 明らかに不自然な流れだってことは分かっているけれど、あの無音に耐えきれなくなったのだから仕方がない。旭は受話器を持ち、電話帳のリストから『望月千草』をプッシュした。6度目のコール音が途切れ、彼女の声に切り替わる。

「あ、来た?」
「なんですかその間抜けな返事は!来ましたよ!あたしが朝ぶつかった男の人が!」
「あらーやっぱり旭だったのね。海理も言ってたのよ、太陽みたいに明るい人にぶつかったって。」
「ちょっ…だったらそう言って下さいよ!こっちにも心の準備とかあるんですからっ!」
「なーにが心の準備よ。そんなもの旭には必要ないじゃない。実際、コミュニケーションとれてるでしょ、海理と。」
「そりゃ…彼が頑張ってメモに書いてくれるからっ…!」
「あのねぇ、普通は喋れない人に初めて会うと普通の人は、嫌悪感とか抵抗感みたいな…うーん…言葉にするの難しいけど、自分とは『違う』、特異なものを見る目で見ちゃうのよ。そこが旭は違うわよねーやっぱり。」
「…はい?」

 なんだか勝手に千草の頭の中で話がまとまっている。

「とりあえず自己紹介はした?あ、ちなみに明日は別の同居人が増えるからー。」
「ちょっ…聞いてないですよっ!それに男の人なんて空がっ!」
「…分かってるわよ。でもこのままじゃいけない、っていうのも分かってるでしょう、旭は。」

 急に落ち着いたトーンになった千草の声に、旭は心の中で小さく頷いた。
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