Colorful World
「空にとっても、そして海理にとっても。
あと明日増える新しい同居人にとっても、〝レインボー〟が適切な場所だと判断したから私はここに入ることを勧めたの。
…もちろん、生活を成り立たせるためには旭の力が必要不可欠よ。」
「な…なんでそんなあたし…っ…。」
「だからあなたの家賃は格安に格安を重ねてあげてるんじゃない!」
「でもあたし、別に専門家とかじゃないし、ただの幼稚園の先生…だしっ!」
「いいのよ、ただの幼稚園の先生で。
旭は旭のままでいてくれればそれで。
それは少なからず、海理にも…影響するから。」
「…影響…。」
「って別にそんな風に重く捉えなくていいのよ。旭が旭でいることに意味があるんだから。とりあえず明日から土日で連休だし、引越しとかその他モロモロ手伝ってあげて。」
「空にはどう説明すればいいんですか?」
「そのまま説明しなさいよ。そもそも、私は入居の際に言ったはずでしょ?今はとりあえずあなたたちだけだけれど、いずれ入居者が増える可能性は否定できないわよって。それを承知で契約したのだから、入居者が増えたからといって文句は言えないはずよ?」
「…そう言われみればそうでした。」
「でしょう?だ、か、らよろしくねーっ!」
「…分かりました。あ、でももしかしたら空は出ていくって言うかもしれませんよ?」
「それはそれで構わないわ。個人的な感情としては留まって欲しいけど。」
「何でですか?」
「空のリハビリにもなるから。」
「…リハビリ…?」
「閉じこもった世界で生きていくことはある意味安全で、安心できるかもしれないけれど…。彼女は心の奥底で、そんな世界を願っていない。そんな気がするから。きっともう飽き飽きしてるんじゃないかしら、と思ってね。平坦で単調な今に。」

 クスリと笑って、千草は言葉を続けた。

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