Colorful World
* * *
リビングに戻ると、海理がキッチンの方に立っていた。
「あ、飲み終わったんですか?おかわりですか?」
首は横に振られた。彼は持っていたカップを流しに置くと、ポケットからメモを出し、ペンを滑らせ、旭に見せる。
『美味しい紅茶をありがとうございました』
「そっ…そんな!あんなのパックのだし、雪城さんのお口には合わないっていうか…!」
また首が横に振られた。そしてゆっくりと移動し、アップライトピアノのそばに近寄った。
この家にはなぜかこのピアノがある。音楽は心にいいとかなんとか、千草が言っていた。
海理は旭の方を振り返り、旭を見つめた後にピアノを見た。
「あ、どうぞ。弾いても大丈夫ですよ。」
旭がそう言うと、海理は目を細めて微笑み、ピアノの前に座った。
鍵盤に触れるだけの指。…音は鳴らない。
その指は白くて細くて長い。ピアノを慈しむように、ただ、触れていく。確かに音はしないのだけれど、どうしてだろう。〝奏でている〟ように見えてしまうのは。
リビングに戻ると、海理がキッチンの方に立っていた。
「あ、飲み終わったんですか?おかわりですか?」
首は横に振られた。彼は持っていたカップを流しに置くと、ポケットからメモを出し、ペンを滑らせ、旭に見せる。
『美味しい紅茶をありがとうございました』
「そっ…そんな!あんなのパックのだし、雪城さんのお口には合わないっていうか…!」
また首が横に振られた。そしてゆっくりと移動し、アップライトピアノのそばに近寄った。
この家にはなぜかこのピアノがある。音楽は心にいいとかなんとか、千草が言っていた。
海理は旭の方を振り返り、旭を見つめた後にピアノを見た。
「あ、どうぞ。弾いても大丈夫ですよ。」
旭がそう言うと、海理は目を細めて微笑み、ピアノの前に座った。
鍵盤に触れるだけの指。…音は鳴らない。
その指は白くて細くて長い。ピアノを慈しむように、ただ、触れていく。確かに音はしないのだけれど、どうしてだろう。〝奏でている〟ように見えてしまうのは。