Colorful World
* * *


「たっ…ただいまっ…。」

『!?』


迎えてくれた雪城さんが思いっきり驚いた顔をした。
…ってそれもそうか。


髪からも服からも滴るくらいにびしょ濡れで、その腕の中に男の子抱っこしてるとか…驚かないわけがない。


「あ、えっと…ただいま帰りました。」

『お、おかえり…。』


5文字以下の日常的によく使う挨拶は唇の動きで読めるようになってきた。
そんな雪城さんはあたしにそう言葉をかけると、小走りでリビングの方に向かった。


「…っとごめんね、ちょっと床だから痛いけど一旦下ろすね?」


返事はない。完全に眠っている…というか意識が途絶えた、というか。
荒い呼吸が繰り返されるばかりで余計心配になる。
こんな雨に打たれて身体も冷えて、熱がさらに上がってしまう気もする。


「うわっ…!?な…なにっ…?」


視界が真っ白になる。
上からわしゃわしゃと柔らかいタオルの感触。
その上から大きな手があたしの頭を撫でている。


パッと視界が開けて雪城さんと目が合った。


「び、びっくりしたぁ…あ、じゃなくてびっくりしましたよ!雪城さん!」


にこにこと微笑みながら、雪城さんはあたしの唇にその細い人差し指をあてる。


「な…なんですか…?」


長い話らしく(少なくとも5文字以下ではない)メモ帳の登場。

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