Colorful World
「ぎゃー!ホントごめんなさい!大丈夫ですか?」

 旭は思わず目の前の人の隣に駆け寄った。

「立てますか?」

 コクンと頷く。その表情は笑顔だ。

(って…うわぁ…顔…綺麗。っていうか…)

「美人…ですね…。」
「……。」

 無言。だけど表情はさっきと同じ、柔らかい笑顔。

(…なんだろ、この人。男なのか女なのか分かんない。)

 一応立ちやすいようにと思って腕に手を添えてみたが、細い。それに肌だって綺麗だ。瞳なんて…

「…綺麗なグレー…。」

 思いついたままに言葉を発すると、目の前の人は白いシャツのポケットからメモとボールペンを取り出した。するすると滑るボールペンの音が優しくて、そっとメモを覗き込む。

『僕、声が出ないんです。』
「え…?」

 またメモの上を走るボールペン。

『起こしてくれてありがとう。僕はもう大丈夫。』
「ほ…本当に?」

 彼はコクンと頷く。色素の薄い茶色の髪がふわりと揺れる。
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