Colorful World
リビングに戻ると朝食がテーブルに並べられていた。


こんがりと焼けたトーストのそばにはマーガリンが置かれている。
余った野菜で作ったであろうスープがほかほかと温かい湯気をたてている。
漂う香りが…海理みたいに優しい。


「すっごく美味しそう!今日もありがとう!」

『どういたしまして。』

「じゃ…いただきます!」

『どうぞ、召し上がれ。』


そっとスプーンを口元に運ぶ海理の指先を見つめながら、ふと思う。
…二人きりで囲む食卓が…なんだか勿体ない。


空も名前の分からない男の子も(男の人、かもしれないけれど)、あの傷だらけの男の子も…ここで一緒にご飯を食べれたら…。


コンコン、と海理がテーブルを軽く指で叩く。
その音に反応してはっと顔を上げると海理と目が合った。


『どうかした?』


口で紡がれる音なき5文字。
心配そうな目に、咄嗟にこんな顔させちゃダメだという意識が働く。


「ううん。なんでもないの。
ってあ!あたしこんな優雅にご飯食べてる暇なかった…!んー!」


あたしはそう言ってスープをぐいっと飲み干す。
そしてトーストをかじったまま席を立った。


…その時、だった。





「…私の分、お願いするわ。」

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