Colorful World
* * * * *


「ただいまーっ!」


今日は全ての子どもたちを帰してすぐに帰って来た。
あたしの声に反応してゆっくりと近付く足音が一つ。


『おかえり。』

「うん、ただいま!あの男の子はちゃんと寝てる?」

『うん。今はね。』


小さく頷いてメモを取り出す。
ペンがさらさらと動く。


『でもご飯は食べてくれなかったよ。
多分きっと、旭じゃないとダメだと思う。』

「そっか…じゃああたしの頑張りどころだね!
今日は一日ありがとう。
あ、…そういえば空と朝ごはん食べれた?」


にっこりと微笑んで、頷く。
この笑顔だけで充分に答え。


「良かったぁ…ちょっと心配だったんだよね。あたし、時間的にあれ以上いられなかったから二人を無理矢理…って感じにしちゃったし。」

『…ありがとう、旭。」

「え…?なんで『ありがとう』?」

『チャンス、くれたから。』


二つの言葉をゆっくりと区切って言ってくれる。
おかげで口の動きだけで読み取れた。
とても嬉しそうな表情と一緒に。


走り出したペンがいつもよりも早い。
…早く、伝えよう…って思ってるみたい。

< 57 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop