仇恋アベンジャー
重苦しい沈黙を破るように雄輔が戻ってきた。
トレーにカットされたケーキとコーヒーが乗っている。
「どうぞ。コーヒーはインスタントだし、ケーキは姉ちゃんが作ったやつだけど」
私が作ったとか、余計なこと言わないで。
雄輔だって、恵一がカフェをやっていることは知っている。
上等のコーヒーと料理のプロに出せる代物ではないこともわかっているはずだ。
「ああ、ありがとう」
恵一は軽く礼を言って、コーヒーを一口すすった。
「なぁ、雄輔」
恵一が呼び掛ける。
え?
どうして恵一が雄輔の名前を知ってるの?
「由紀には本当のこと、話したのか?」
本当のこと?
恵一も雄輔も、何を知っているというの?
「すみません、マスター。まだ話してません」