仇恋アベンジャー

なんてことだ。

姉思いの雄輔は、引き込もって無断欠勤する私の代わりに、店に出てくれていた。

申し訳なさが募り、涙がじわり。

「匠も心配してたぞ」

恵一は私を責めることなく穏やかに言った。

私の意気地がないばかりに、店に迷惑をかけてごめんなさい。

思ったけど、声に出せなかった。

「大体の話は雄輔から聞いた」

「大体って、どこまでですか?」

「お前の知らないことまで、かな」

「私が知らないこと?」

何よ、それ。

私が知らないことって、わけわかんない。

雄輔の方が、よっぽど事態をわかってないはずなのに。

私たちが兄妹弟であることまで突き止めた私が、何を知らないっていうの。

「由紀。お前は誤解してる」

< 146 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop