仇恋アベンジャー

雄輔が何を言っているのか、理解ができなかった。

この母さんじゃないって、じゃあどの母さんだっていうのよ。

私たちには他に母親なんていないじゃない。

「あんた、バカ?」

「バカは姉ちゃんだよ。何も知らないで、マスターに迷惑かけて」

私は何だか腹が立って、今すぐに怒鳴り散らしたくなった。

だけど目の前には恵一がいる。

インスタントコーヒーの力でぐっと堪えた。

「俺たちの母親は、親父の最初の奥さん」

最初の?

何それ、どういうこと?

「お父さん、お母さん以外の人とも結婚してたの?」

「それも知らなかったのか」

知らなかったよ。

初耳だよ。

何それ。

虚しさがどんどん込み上げてくる。

そんなこと、誰も教えてくれなかった。

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