仇恋アベンジャー
産みの母親は、いったい誰なの?
私はいったい何者なの?
今まで信じていた物事がぐるりとひっくり返って、まるで世界の終わりを迎えているような気分である。
その不安は、涙となってポタリと落ちた。
もし母が生きていれば、どうしてそんな大事なことを教えてくれなかったのかと、思いっきり文句も言えただろう。
血の繋がりもないのに育ててくれたことに対して、感謝することもできただろう。
今ではもう、叶わない。
私が母にできることといえば、意味があるかどうかも疑わしい線香を上げることくらいだ。
ただひとつ、恵一と私が血の繋がった兄妹ではないとわかったことは、大きな救いになった。
「由紀。二人で話がしたい」
恵一の言葉に、軽く体が震えた。
コクりと頷けば、雄輔が立ち上がる。
「じゃあ俺、今日は親父のとこに帰るよ」
雄輔は母の部屋で上着を着て、すぐにうちから出ていった。
沈黙する私と恵一を母の遺影が見つめていた。