仇恋アベンジャー
首をかしげる私に、うんと短く答える。
「探ってたって、何を?」
「産みの親のこと」
それはつまり、私の育ての母、松井紀子のこと。
ごくり、鯖を飲み込む。
「でもさ、自力じゃほとんど何も掴めなくて。まぁ、名前くらいはわかったんだけど」
「でも、母の葬儀に来てましたよね?」
「ああ、それは……」
恵一は軽く味噌汁をすすった。
「たまたま知ったんだ」
「たまたま?」
「ああ、たまたま。新聞読んでて、事故のことと訃報が載ってたから」
驚いた。
てっきり誰か事情を知っている人が彼に知らせたのだと思っていたのに。