仇恋アベンジャー

「初めは読み流したんだけど、何となく引っ掛かって。もしかしたら知り合いなんじゃないかって。それで、よくよく思い出してみたら、産みの母親だった」

何て皮肉な運命なんだろう。

追っていた母に辿り着いたのが、死んでからなんて。

それじゃあ自分を捨てたことに対する文句を言うことさえできない。

「何となく、葬式に出てみた。遺影の顔だけチラッと見てすぐに帰ったから、お前の顔も雄輔の顔も、親父さんの顔も見なかった」

そこで恵一が私の顔を覚えていれば、私たちは今と違う関係だったのだろうか。

縁というのは実に不思議なものだ。

「私は、参列者の記帳を見てこの店に来たから……それもまた、たまたまってこと?」

「そうなるな」

そもそもあの記帳がなければ、塚原恵一という男に辿り着くことはなかった。

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