仇恋アベンジャー
「ねぇ、マスター」
「ん?」
「好きです」
唐突に告げると、彼はポカンと目を見開いた。
まだ腕の擦り傷が痛むけど、そんなのどうでもいいくらいに心が愛で溢れている。
「……どうした?」
「別に、言いたくなっただけですよ」
「あっそ」
あんなに口に出せなかったのに、不思議なものだ。
気持ちに自信が出ると、急に伝えたくなる。
言い足りない。
もっと上手い言葉はないのだろうか。
この気持ちを全て一言で伝えられる言葉は。
「由紀」
「はい?」
「俺も、好きだよ」
言われるのは慣れない。
照れて赤くなる私を満足そうに眺めると、恵一は何事もなかったかのように食事を続けた。