仇恋アベンジャー
見覚えのある通りまで来ると、急に緊張が高まる。
もどかしい右折で住宅地に向かう坂へ入ると、目的地はもうすぐそこだ。
白い塀が見え始め、みるみる立派な邸宅が現れる。
恵一は慣れたようにハンドルを操作して、私が先日立ち尽くした玄関口を通過してしまった。
その代わり、次の角で左折。
そこには塚原家の駐車場があった。
可愛らしいピンク色の軽自動車と、ベージュ色のセダンが停まっている。
恵一は涼しい顔のまま、自身の黒い車を軽自動車の横に停めた。
さあ、いよいよだ。
シートベルトを外して車から出ようとすると、恵一の手が私の腕を掴んだ。
「大丈夫か?」