仇恋アベンジャー

いつまでも浸ってはいられない。

私たちは車を降りて、駐車場の脇の扉から塚原邸の庭へと入った。

きちんと手入れされた、立派な庭だ。

扉から建物へと石の通路が整備されている。

左には松の木。

右には川原の石のようなものが敷き詰めてある。

向こうの方に水音が聞こえる。

きっと池でもあるのだろう。

ここまで立派だと、ビビる。

ここの家主はとてつもない権力を握っていて、楯突けば私や周りの人間を簡単に捻り潰せてしまうのではないか。

そんなことまで考えてしまう。

家が見えてきた。

ここは京都か?と錯覚するほど美しい、しかし控え目な日本家屋。

シンプルな一階建ての家屋は、広い敷地に平べったく這いつくばっている。

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