仇恋アベンジャー

扉は引き戸になっており、一旦二人並んで深呼吸。

「いくぞ」

「はい」

恵一のごつごつした手が扉にかかると、思ったより軽い音を立てて一気に開かれた。

「ただいまー」

恵一が中へと入りながら声をかける。

続いて私も擦り寄る。

広い玄関はピカピカのフローリングに繋がっていた。

奥の方からパタパタと音が聞こえてきた。

私は背筋を伸ばして歯を食い縛った。

「お帰りなさい恵一」

確かにあの時の女性の声だ。

オレンジ系ブラウンの髪を揺らしながら小走りで近付いてくる。

彼女は息子の隣に私の存在を確認すると、

「あら?」

と声を漏らした。

< 256 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop