仇恋アベンジャー
扉は引き戸になっており、一旦二人並んで深呼吸。
「いくぞ」
「はい」
恵一のごつごつした手が扉にかかると、思ったより軽い音を立てて一気に開かれた。
「ただいまー」
恵一が中へと入りながら声をかける。
続いて私も擦り寄る。
広い玄関はピカピカのフローリングに繋がっていた。
奥の方からパタパタと音が聞こえてきた。
私は背筋を伸ばして歯を食い縛った。
「お帰りなさい恵一」
確かにあの時の女性の声だ。
オレンジ系ブラウンの髪を揺らしながら小走りで近付いてくる。
彼女は息子の隣に私の存在を確認すると、
「あら?」
と声を漏らした。