仇恋アベンジャー
「入ってこないのかー」
私の存在を知らない父親が、二人を催促している。
それぞれの思惑が交差して張りつめた空気のまま、誰も声をあげられなかった。
結果、父親の問いを無視した形になる。
気まずそうに佇む息子。
愛しい息子と憎き小娘の関係に戸惑う母親。
そんな彼女に睨まれ固まる私。
私にはこの家に入ってほしくないが、息子は入れたいと、表情が語っている。
しかし恵一は私から離れてまで上がろうという気配を見せない。
時間が過ぎるごとに空気は張りつめていく。
さすがに息苦しさを感じ始めた頃だった。