仇恋アベンジャー
「おーい」
軽い声と共に、左隣の扉が開いた。
現れたのは、白髪混じりの短髪にメガネをかけた初老の男性。
恵一の父親だ。
少しふくよかで、優しい顔つきをしている。
「おや?」
私に気付き、首をかしげつつ玄関へとやって来た。
私は慌ててお辞儀をした。
「恵一、こちらのお嬢さんは?」
母親の視線を感じる。
名乗ろうとして、出来なかった。
代わりに恵一が答える。
「俺の、彼女」
それを聞くなり父親はにっこり笑って言った。
「とにかく、ここは寒い。みんな、部屋に入ろう」