仇恋アベンジャー
そもそも私がこのカフェでバイトを始めたのは、この男に近付くためだった。
初めてこの店にやってきた時、扉の横に貼り付けてあった「バイト募集中」という手書きのチラシ。
その時私はまだ一度もこの店に入ったことはなかったけれど、直感的にこれはチャンスだと思い、紙を引っぺがしてこの店に乗り込んだ。
「いらっしゃいませ」
と笑顔を向けてくれたのはこの店の店主である恵一ではなく、爽やかな短髪の男だった。
今ではバイトの先輩である、中田匠(なかた たくみ)だ。