仇恋アベンジャー

開店当初は自分一人だけで細々と営業するつもりだったらしい。

だけどこの周りには意外と会社や住宅地があって、思いの外繁盛したんだとか。

だからバイトを雇って、自分は厨房での作業に集中できるようになって。

そしてランチの提供などを始めた。

「へぇ、ラッキーでしたね」

「まぁな。いい物件に巡り会えたと思ってる。でもいつどうなるかわからないさ。近くに似たような店が出来れば必然的に客は半分になる」

シビアな自営業の世界。

だけどきっと、一般企業に勤めるよりは穏やかな毎日なんだと思う。

それもこれもきっと、母からの資金提供があったからだ。

そう思ったら、こんな店潰してやりたいと思った。

贅沢なんてしなかった母。

毎月の振り込みがなければ、もっと楽できたかもしれないのに。

事故になんて遭わなかったかもしれないのに。

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