仇恋アベンジャー
作業を終えた私たちは店の明かりを消して、厨房のある奥の部屋へ。
私がエプロンを外していると、恵一が言った。
「余り物になるけど、飯、食ってくか?」
私は少し驚いて、エプロンを落としてしまった。
「良いんですか?」
朝食も頂いたばかりなのに。
「何遠慮してんの。彼女だろ」
そう言われると、ちょっとむず痒い。
彼氏と彼女がデートとかキスとか以外に何をするかなんて知らないし。
どのくらいプライベートに踏み込んで良いかもわからない。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
微笑めば、微笑みで返される。
「先に上行ってろ」
「はい」
恵一と言えば悪いイメージしか持っていなかったけれど、もしかしたら精一杯優しくしようとしてくれているんだろうか。
なんとなく気まずい感じがするのは、付き合いたての彼女に照れているからではないだろうか。