仇恋アベンジャー
私から無理に押して押して押しまくって何とか今の関係になったけれど、彼は彼なりに私を愛そうとしてくれているのかもしれない。
優しくしたりできないと言っていたくせに、今日の恵一は優しかった。
彼の部屋へ昇りながらそう考えていたけれど、靴を脱ぐときには考えを切り替える。
優しかろうが私には関係ない。
恵一は言わば母の仇のようなもの。
私にだって甘い言葉をささやいては金品を騙し取ろうとするかもしれないのだ。
いつだって気は抜けない。
早く弱味を見つけて母のことを白状させなければ。
部屋に入り適当な場所に荷物を下ろす。
ファンヒーターのスイッチを入れ、テレビの前のソファーに座って雄輔にメールを入れておく。
「遅くなるかも」