仇恋アベンジャー

「あの、外の貼り紙見たんですけど」

私が剥ぎ取ったチラシを見せながらそう言うと、匠先輩はすぐに

「マスター!」

と店の奥に声をかけた。

木の玉を連ねてでできた暖簾を潜り抜けて出てきた、第一印象で言えば大男。

肩につくほど長くて緩いウェーブのかかった黒髪を後ろに束ね、シェフのような白いトップスを着ていた。

顔はまるで外国人のようにハッキリした顔立ちをしている。

彼は大きな目で私を見据え、

「ああ、バイト志望の子?」

と身体の割りには高い声で言った。

「はい。七海由紀(ななみゆき)です」

これが彼との最初の会話だった。


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