仇恋アベンジャー
そのまま見つめていると、急に恵一の顔が近くなった。
反射的に目を閉じると、唇に軽く何かが触れる。
触れたけど、昨夜のように長くて執拗な接触ではなく、本当に触れたかも疑わしいくらいすぐに離れていった。
優しいキス。
物足りない……と思うなんて、おかしい。
「食うぞ」
恵一はそのまま私を置いてテーブルへ。
「はい」
その後を追う。
恵一が店の余り物で作ったというディナーは、やっぱり美味しかった。
母に貢がせていた証拠は、まだ掴めない。