仇恋アベンジャー




翌日、彩子に言われた通り、買った服を着てカフェへ出向いた。

どちらにするか迷ったけど、いきなり慣れないスカートを履くのは気が引けたので、肩の開いたニットの方にした。

オフショルダーと呼ばれるデザインのそのニットを着るには、ブラ紐を透明のものに交換しなければならなかったりして、とても面倒だった。

世の中の恋する女たちは、日常的に手間を惜しまず努力しているのか。

慣れない服に照れ臭い気持ちでカフェに入り、肩が開いた状態でエプロンを巻く。

「お疲れ様です」

恵一に声をかけてみる。

私の立てる物音と声に気づいた彼の顔が、こちらを向いた。

「お疲れ」

特に変わった様子はなし。

……つまんないの。

肩が開いているだけに、肩透かし。

半ば拗ねたような気持ちで店へと入った。

店内はちょうどお客さんが捌けたところらしい。

匠先輩がテーブルの片付けをやっていた。

「お疲れ様です」

彼に声をかけると、にっこり笑って

「今日はずいぶんセクシーだね」

と言ってくれた。

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