仇恋アベンジャー
この日、雄輔が帰宅したのは午後3時頃だった。
バイトに出掛けていたらしい。
「あー、帰ってたんだ」
私を見るなり間抜けな声でそう言うものだから、少々腹が立つ。
「あんた、いつまでうちにいるつもり?」
軽く睨みつけると、
「姉ちゃんが落ち着くまで」
と睨み返される。
「落ち着いてるけど」
もうしくしく泣いてるだけの私じゃない。
「どこがだよ」
雄輔は心底呆れたように笑った。
どこがって、どこをどう見ても落ち着いてるでしょ。
バカじゃないの?という顔を見せてやると、今度は同情するようなぬるい目で見つめられる。
「もうやめたら? 自分の彼氏を探るのは」
「いいじゃない。放っといてよ」
「探って何かわかったとして、どうするつもり?」
「別に、今はまだそこまで考えてない」
貢いできた母の財を、何かしらの形で取り返したい。
でも、騙し返して奪ってやろうとか、そんな風には思ってない。
ただ、母にそんなことをさせた事実を悔いる程度には、傷付けてやりたい。