とある國のヒメ
~序章~
きゃぁぁぁぁぁっ!
うわぁぁぁぁぁっ!
城内のあちこちから、悲鳴が聞こえてくる。
―――こわいっ
「姫さまっ、こちらへお逃げください!」
うばやが城の抜け道をさす。
「お父様やお母様は?一緒に逃げないの?」
「・・・あとからまいられます。さぁ、早く。」
少しの沈黙のあと、口を開いた。
「カイ!カイはどこにいるの?」
「カイはこの先で待っています。きっと姫様を守ってくれるはず。さぁ、時間がないのです!」
うばやは、強引に私を抜け道の中に押し込んだ。
そして・・・外から扉がしまる。
抜け道の中は、かすかにあかりがともっていた。
「うばや!?うばやは逃げないの??」
私は抜け道の中から、扉の向こうにいるであろう、うばやに向かって叫ぶ。
その時、扉の向こうで、たくさんの人の足音が聞こえた。
・・・人の声も。
「ここには王女はいない。どこにいったんだ?」
「おまえ!王女はどこにいる!?」
「知りませんわ。ここにいるのはわたくしだけです。」
「・・・そうか。」
何かが空をきる音、そして小さなうめき声が聞こえた。
(こわい、こわい、こわい、コワイ・・・)
怖さで、足が動かない。