とある國のヒメ
闇の中で、最後に見たもの。
それはカイの驚いた顔と、その後ろにある月だった。
紅い紅い、紅の色の満月。
とてつもなく恐ろしくて禍々しい・・・
私の大切なものをつぎつぎと奪ってゆくもののように感じた。
紅の月とカイが重なる。
・・・やめて。
カイを・・・連れて行かないで・・・!
目の前は完全に闇に閉ざされた。
もう何も見えない。
目をあけたら、また今までのようにみんなが笑っていてくれないかな?
これは夢なんだよって。
薄れゆく意識のなかで、カイの声が聞こえた。
よく聞こえない。
私はそのまま、深い深い闇の中へと落ちていった―――