とある國のヒメ
紅の月
《姫さまっ》
あの時、そう私をよんだのは、カイだった。
「姫さま、お怪我は?」
「ないわ。だい・・・じょうぶ。」
「そう、ですか。」
心配、してくれているのかな。
さっきまでとは違い、城の外は静寂に包まれている。
今までのことが・・・うそみたいに。
もう、あれが本当のことなのかもわからない。
もしかしたらあれは悪い夢なんじゃないかって。
「・・・ま。姫さまっ。」
「あ、ごめんなさい。ぼーっとしていて。」
「本当に、大丈夫なのですか?」
「ええ。」
そういって、にこりと笑う。
顔がひきつる。
私はちゃんと笑えているかしら。