とある國のヒメ
ありがとうは帰って来てくれたときに言うよ。
ファナは絶対、カイにありがとうっていうからね。
「うん。」
まだまだ言いたいことがある。
けどもう時間がないよね。
どこからか出発の合図が聞こえてくる。
「もう出発だ。」
うん。
わかってる。
「またね。」
バイバイでもさよならでもない。
またね。
「また今度会うときは…あんたを守れるほど強くなってきますよ。…姫様。」
…うん。
返事の代わりに精一杯の笑顔で。
「それじゃ。」
身を翻し、列へと戻っていく。
次第に姿が小さくなっていった。
「…もうファナってよんでくれなかったね。」
小さく呟いたその言葉は、兵士たちの足音にかきけされた。
次に会うときまでには、ファナも本当の姫に近づいてるかな?
あれほど嫌だった「姫」に今は近づきたいと思ってる。
おかしいよね。
見えなくなりそうなカイの背中に語りかける。
ファナだって…ううん。
私だって変わって見せるよ。
「私」はくるりと向きをかえ、将軍のもとへと歩いていった。