とある國のヒメ

なみだ。


…。

………。

ここどこ…?

辺りは白い霧に包まれている。

見渡す限り白の世界。

「誰か!誰かいないの?」

声に出してみる。

だが、霧の向こうからは返事が来そうにない。

「…誰?」

うっすらと…黒い影が見えた。

だんだんと濃く、姿もはっきりしてくる。

人?

「カイ?」

そうであってほしいという願いもこめて、その名を口にだした。

「…姫様。」

聞きなれたこの声は…!

「カイ!!」

次第に霧がはれ、姿がはっきりとしてきた。

自分が今いる場所も見えてくる。

古い…宮殿?

ぼろぼろの階段の上に私とカイは立っていた。

「ねぇ、ここにいたら危ないよ?」

そういってもカイは微笑むだけ。

階段は今にでも崩れそうなのに。

「カイ?」

…カイの隣にだれかいる?

「お父様…お母様っ?」

2人はにっこりと微笑んだ。

「みんな帰らないの?」

3人とも動こうとはしない。

声は届いているはずなのに。

私は足を一歩前に踏み出した。

と、そのとき。

ガララララッ!!

「きゃっ!」

目の前にある階段が崩れていく。

「まって!」

けれど、誰1人と動こうとはしない。

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